歴代最悪の決勝?
ボンジョールノ、諸君。
今季のフッボルシーンを締め括るチャンピオンズリーグ(CL)の決勝が1日に行われ、ヨーロッパリーグに続くイングランド勢同士の対決でリヴァプールが2―0という危険なスコアでトッテナムを下し、昨季は涙を呑んだ同じファイナルの舞台で見事に雪辱を果たした。
だがそのゲーム内容に関してはどうも評判が芳しくないようだ。
リバプールのブラジル代表FWロベルト・フィルミーノとトットナムのイングランド代表FWハリー・ケインという、両チームの鍵を握るストライカーが負傷明けの復帰戦でもあったことから、両者とも動きが鈍く、効果的な働きができなかったことも膠着した展開の要因の一つだが、90分間の試合内容に「多くの人々は歴代最悪のCL決勝と捉えている」と厳しい評価が下されていた。
(Football ZONE web編集部)
このように歴代最悪と酷評しているメディアもあるが、S級マニア・オブ・ビューラーの私から言わせてもらえらば、それはただの錯覚だ。
早過ぎる時間帯に幸運な先制点を得たリヴァがリスクを犯さずに手堅くゲームを進めたことで表面的には動きのない試合になってしまったが、それは言うなればベース・オブ・ボールにおける投手戦のようなもので、ミスが即命取りとなる息詰まる神経戦がそこには展開されていた。
ペレやマラドーナを凌駕するパワーワード
よって観戦するには十分に満足の得られる好ゲームだったが、マニア・オブ・ビュー値の低い人間がそれを退屈だと錯覚してしまう心理も分からぬではない。
その理由を今から解き明かしていこうと思うのだが、私が一方的に語るだけでは諸君らも刺激がないだろうから、ここで手がかりを一つ提示しよう。
ヒント:カリウス
ヒントと書いたが、もはやそれが答えだと言ってもいい程のパワーワードとなっている。
言葉での修辞でそう表現することはあるが、ペレやマラドーナ、メッシでさえ実質的にはたった1人で試合の勝敗を決することはできない。しかしカリウスは並みのGKであればそのキャリアでも数度しか出せないであろう痛恨の一撃をCL決勝という舞台で2度も炸裂させ、文字通り一人で試合を支配してしまった。
昨季の華々しい残像
このように昨季はカリウスという道化師がピッチというテントで世界に衝撃と笑いを与える大サーカスを披露してくれたことで、CL史上でもかつてない極上のエンター・オブ・テインメントに仕上がっていた。
故に今季の決勝は平年に比べて特段低劣なものではなかったにも拘わらず、昨季の華々しい残像があったために過分に色褪せて見えてしまったのだ。回らない寿司屋に行ってしまうと回転寿司が何だかしょぼく見える、あの感覚だ。
シーズンを跨いでまでその影響力を行使し続けているカリウス。彼がもう一度CL決勝の舞台でアクロバティックな曲芸を見せてくれることを私は願って止まない。