なぜ見出しに「ハゲワシ」?
ボンジョールノ、諸君。
わかっていたことだが、メディアというものは恥というものを知らないらしい。日頃は体制や社会に対して「人権!人権!」と金切り声を上げるくせに、自らが生業とする報道に関しては人権をきれいに置き去りにしてしまう。このダブル・オブ・スタンダードには全く開いた口が塞がらない。
“レアルのハゲワシ”がヴァラン残留を確信「あと何年もマドリー」
エミリオ・ブトラゲーニョは、ラファエル・ヴァランが今シーズン終了後に退団するというニュースに関して言及した。
現在もレアル・マドリーの機関で仕事を続けるダイレクターは、フランス人の残留に関して、普段とは違って力強いコメントを残した。
「ヴァランは多くのことをもたらす非常に重要な選手であり、あと何年もマドリーでプレーを続けるだろう。彼はここで幸せを感じている」(SPORT.es)
令和生まれのキッズらには馴染みがないだろうが、ブトラゲーニョとは1980年代に主にレアルなどで活躍したスペイン人選手で、86年メキシコ・ワールドカップのデンマーク戦では1試合で4得点を記録した。
そんな彼の異名が「エル・ブイトレ」、つまり日本語では「ハゲワシ」なのだが、それをあえてレアルに関する記事の見出しに取る必要があったのかと、私には強い疑念が残るのだ。
ジダンのトレードマークと言えば…
諸君らも承知の通り、現在のレアルの監督はソラーリに代わって電撃復帰を果たしたジダンだ。ジダンのトレードマークといえば……つまりは…その、頭部というか、例のヘアスタイルだ。わかるだろ?
当然、ジダンも好き好んでそのようなヘアスタイルを採用したわけではなく、これは肌の色と同様に多分に先天的な要素が強いものだ。すなわちそのヘアスタイルは遺伝や体質というべきものであって、そこに差別や中傷が生まれないように周囲は存分に気を払い、繊細でなければならない。
にも拘わらず、そういったことを本来は啓蒙すべき立場のメディアが、レアルの記事に堂々と「ハゲ」と掲げてしまっているではないか。これはジダンに対する意図的な揶揄とも受け取られ、人権侵害以外の何ものでもない。
報道に嗜好を交えるな
おそらくこの見出しをつけた記者はバルシスタ(バルセロナのサポーター)なのだろう。論評に自己の嗜好を交えることは自由だが、報道ではそれら全てを排して、ありのままを伝達することが求められるはずだ。
何も私はこの記者がバルシスタであることにケチをつけているわけではない。贔屓チームの一つや二つは誰にだってあるだろうし、かく言う私も大の虎党(阪神ファン)だ。
ただ私は記者個人の公私混同によって言論が暴力へと変質し、それが人権侵害のトリガーとなってしまう危険性を説いているのだ。今一度、世の記者らにはメディアという本来の本分に立ち返って頂きたい。