17日に行われたプレミアリーグ第26節のチェルシー―マンチェスター・オブ・ユナイテッド戦で、オブ・ユナイテッドのDFハリー・マグワイアがライン際で競り合ったチェルシーのバチュアイに対し、倒れながら故意に股間へキックを入れたのではないかと物議を醸している。
スコアレスの前半21分に起きたこの行為で仮にマグワイアに対しレッドカードが提示されていれば、オブ・ユナイテッドの勝利(0―2)はおそらくなかったであろうことを考えれば、試合の趨勢を大きく左右するノーファウル判定であったと言える。
負けたチェルシーのランパード監督は当然試合後に不満を表明し、マグワイアの行為は明らかな故意で退場にすべきだったと審判の対応を批判した。
対する当事者のマグワイアは、
「彼を捕らえたことはわかっている。僕の上に倒れてくると感じて、それを止めるために自然な反応で足をまっすぐに伸ばした。蹴ったのではなく、意図はなかった。傷つけるつもりもない。自然なリアクションだった。彼に謝罪したし、審判のセンスは良かったね」
(GOAL)
と悪びれずに弁明し、審判のセンスまでもを称賛している。
諸君らがこのマグワイアの行為や言葉についてどのような反応や感慨を持ったかは知らないが、私としては“マグワイア”の過去の過ちから彼の言葉を安易に鵜呑みにすることはできない。
フッボル脳筋の諸君らはおそらく知らないであろうが、1990年代のMLBで本塁打を量産し、98年にはシーズン70本塁打を放ち、当時のMLB記録を打ち立てたマーク・マグワイアという選手がいた。
そのムキムキの肉体から放たれる打球はピンポン球の如くスタンドへと吸い込まれ、メジャーリーガーの人間業とは思えぬパワーをまざまざと見せつけられたが、何のことはない、彼は禁止薬物を使用していたのだった。そのためにマークは引退後には確実視されていた殿堂入りも逃し、因果応報、他の選手やファンを欺いていた代償を払うことになった。
つまり私が言いたいのは、歴史を教訓とするならば「ムキムキな肉体を持ったマグワイアという人物は信用に値しない」というもので、それに見事に当てはまるオブ・ユナイテッドのハリー・マグワイアの言葉を真に受けてしまうことへの強い警鐘だ。
このようにピッチの中の事象だけではなく、他競技の歴史にまでその分析の裾野を広げる。それがフッボルミステリーを解く近道と言えるだろう。