マネジメントの目的は解説や監督業ではない?
日本のフッボル界に久しぶりのビッグ・オブ・ニュースが飛び込んできた。
吉本興業が22日、サッカーのイングランド1部、アーセナルの元指揮官アーセン・ベンゲル氏(69)とマネジメント契約を締結したことをファクスで発表した。今後、日本でのサポート業務を務めるという。
(略)
同氏は事務所を通じ「名古屋グランパスを指揮して、天皇杯を獲得してから25年の月日が流れました。東京に戻ってきます。本当にうれしいです。日本サッカー界の皆さまに再会できることを今から心待ちにしています。今秋、日本で会いましょう!」とコメントを寄せた。
(サンスポ)
名古屋グランパス・オブ・エイトでも指揮を執り、アーセナルの監督を2017~18年シーズン限りで勇退したベンゲルが再び、日本との関係を深めようとしている。
このベンゲルのアクションについて諸君らは、サッカー解説や、もっと踏み込んでJリーグや日本代表監督復帰への布石などと夢想を働かせているようだが、ハイ・マニア・オブ・ビューラーの私からすれば如何にも素人じみた反応と言わざるを得ない。
「ベンゲル=フッボル」という構図に囚われていては、物事の本質を見誤ってしまう。この壮大なミステリーを解くカギは、提携する吉本興業と「今秋、日本で会いましょう!」というベンゲルの言葉にある。
冬の風物詩に参戦?
秋に来日ということであれば、業務での本腰が入って来るのは冬場となる。冬の仕事で吉本興業が大々的に関わっているイベントと言えば、そう、年末の風物詩『M-1グランプリ』だ。
思い出して欲しい、昨年のM-1グランプリ決勝を。若きお笑いスター「霜降り明星」の優勝で大団円を迎えたかに見えた放送終了後、とろサーモン久保田とスーパーマラドーナ武智が打ち上げの席で、審査員の一人である上沼恵美子の採点について恣意的であるとネットのライブで不満をぶちまけたのだ。
そこには女性差別とも窺われる言動も含まれていたために大きな顰蹙を浴びたが、一方で彼らの不満に同調を示す世間の声も多数存在した。いやむしろ、世間よりも若手芸人の中にこそ2人の怒りに共鳴していた者がたくさんいたはずだ。
クールジャパン戦略の一環
その若手芸人らからの憧憬によって権威付けされているM-1グランプリの運営側としては、どうしても彼らの疑心を払拭する必要があった。そこで考えたのが、徹底的なフェアネスを保証すること。
そこで上沼を審査員から外し、日本のお笑い界には何のしがらみもないベンゲルを代役として起用することを決断し、今回の提携に至ったと考えられる。言葉の弊害はあるが、そこはトルシエの通訳だったダバディがスタンバっていることだろう。
ベンゲルが加わることで欧州での認知にも期待でき、国際的な知名度向上にも一役買うことができる。クールジャパン機構が反社騒動に揺れる吉本に出資の継続を明言していたが、なるほど、このようなクールジャパン戦略が隠されていたわけか。