丸刈りの秘密
日本史上最高の天才と称され、欧州でもUEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)を制覇したフェイエノールトで名声を高め、現在はJ2のFC琉球に所属するリビング・オブ・レジェンドの小野伸二が、同じくリビング・オブ・レジェンドであるヴィッセル神戸のイニエスタについて語っている。
小野の目に、そんなイニエスタは、どう映っているのか。
「僕が何かを言える立場ではないですよ。もうね、次元が違う。見ているだけで心が躍るというか。ピッチ外でも素晴らしい人格者で、トレーニング中も真面目らしいです。僕も生で練習を観に行きたいと思ったくらい」
(サッカーダイジェスト編集部)
私も若き日の小野のプレーを見た時には必ずや世界に出しても「次元が違う」プレーヤーになれると確信していたのだが、如何せんつまらぬ試合で大ケガに遭い、絢爛たるフェイエノール時代でさえ自分の満足いく感覚ではなかったという底なしのポテンシャルを、存分に発揮できる機会が永久に喪失されてしまったことは無念という他ない。
しかしそんな小野でさえ「次元が違う」と漏らすのが、スペイン無敵艦隊の操舵手だったイニエスタのそのスキルだ。…そうか、そういうことだったのか。
私は小野が丸刈りにしている理由は、てっきり2002年のUEFAスーパーカップで対戦したレアル・マドリードのジダンに触発されたものかと思っていたが、実はイニエスタからの影響だったとは。なるほど、これでまた一つ、フッボルのミステリーが解き明かされた。
和製ファン・バステン?
まあそれはいいとして、アスリートであるならば誰にだってひれ伏したくなるような衝撃的な才能との出会いはあるものだ。そういう私も現役こそ退いてはいるが、この夏に小野をも凌駕する才能を持った日本人選手を発見してしまった。その名は、佐々木朗希、17歳。
現在は大船渡高校ベース・オブ・ボール部に在籍し、189㎝という恵まれた体格から振り下ろす直球は最高163キロを記録する。そうした桁違いの球速を誇りながらも、甲子園への出場経験がないことから肩と肘の消耗が少なく、まさに巨大な原石そのものと言える。
U―18ワールドカップでは血マメの再発で登板機会がほぼなかったが、その一事でもって彼のポテンシャルへの疑義を差し挟む輩はドラフト戦術で攪乱を意図するプロ球団か、または腐り切った商業主義に毒された売文家くらいだろう。佐々木が仮にフッボルへの道を歩んでいたとすれば、顔からして和製ファン・オブ・バステンと称されていたことは疑いようがない。
私は彼の投球を見た瞬間に思わず惚れ惚れと嘆息してしまい、さらには大船渡高の縦じまのユニフォームから強い猛虎魂を感じ取ることができた。佐々木よ、来年こそは猛虎戦士として甲子園のマウンドで躍動している姿を期待しているぞ!