事件を個人に矮小化
ベルギー1部のロイヤル・アントワープFCの三好康児がカップ戦で鮮烈な2ゴールを決めたので、それについて詳細な解説を加えようかと思っていた矢先、フッボル界に衝撃的なニュースが飛び込んで来た。
現地時間9月26日、フランス紙『Nice Martin』をはじめとする複数のメディアは、今月16日にリーグ・アンのニースに所属するデンマーク代表FWキャスパー・ドルベアが所持していた900万円相当の高級腕時計が、クラブ施設の更衣室で盗まれた事件の犯人が「見つかった」と大々的に報じた。
ニースの地元紙『Nice Martin』によれば、なんと犯人はチームメイトで、センターフォワードのポジションを争うラミヌ・ディアビ・ファティガだったという。
(サッカーダイジェストWeb編集部)
同じフッボル人として情けなくて、目から鱗が落ちそうだ。…適当に日本の諺を使ってみたが、この使い方は合っているかな? まあ、いい。
しかしこれでまたフッボル界が野蛮な人間の集まりだということを図らずも証明してしまった。その中でも私が最も落胆しているのは、仲間内で窃盗事件が起きたことよりも、クラブ側が提示したその後の処分案についてだ。
記事に拠れば犯人のディアビ・ファティガを聴聞会にかけ、最悪の場合は解雇にするということだが、ちと対応が甘すぎるのではないか。事件を個人に矮小化することで、クラブに返り血が及ばないように手心を加えているとしか思えない。
野球界の感銘的な対応
そこにつけて私が思うのは、上級国民のみが興じるベース・オブ・ボール界の対応だ。つい先日もこのような出来事があった。
甲子園で春夏5回の優勝経験がある高校野球の強豪、私立横浜高(横浜市金沢区)は26日、野球部の練習や他校との試合を当面自粛する方針を決めた。金子雅部長が部員に日常的に暴言を浴びせていた疑いがあるとして調査をしており、校内の混乱を避ける必要があると判断した。
(共同)
日本高校野球界の超名門である横浜高校ですら、不祥事を起こした部長個人だけではなく、連帯責任としてチーム全体が活動を自粛するという感銘的な処置を取っていた。まさに「ワン・フォー・オブ・オール、オール・フォー・オブ・ワン」のラグビー精神を地で行っている。
しかも驚くことに彼らはアマチュアに過ぎず、同じく刑事事件に相当するような事件を起こしていながら、全体責任を負おうとしないニースというプロクラブのだらしなさは、ベース・オブ・ボール界とフッボル界の倫理面での格差を如実に映し出している。
盗んでいいモノはただ一つ…
今からでも遅くはない。ニースはディアビ・ファティガと監督責任のあるパトリック・ヴィエラ監督の即刻解雇と、リーグ戦の勝ち点30の返上に、3カ月の活動停止を申し出るべきだろう。そうすることでようやく、フッボル界の矜持は最低限保たれる。
子供を諭すようでこんなことは言いたくはないのだが、世のフッボル・オブ・プレーヤーよ。人のモノを消して盗むんじゃない。他人のモノで盗んでもいいのはただ一つ。それはスキルだけだ……(決まった)。