将来の日本サッカー界を揺るがす危険行為
今週末に開幕するJリーグの地鳴らしとなるルヴァンカップで、目を覆いたくなるようなとんでもない事件が発生した。
[2.16 ルヴァン杯グループA第1節 名古屋1-0鹿島 パロ瑞穂]
鹿島アントラーズのMF松村優太(←静岡学園高)が公式戦デビューからわずか9分で一発退場を命じられてしまった。
(略)
しかし、1点を追いかける後半45分にドリブルでPA内に進入し、流れたボールに滑りながら右足を伸ばした際、先にキャッチした名古屋GKランゲラックと交錯してしまう。足裏を向けられて接触したこともあってランゲラックが激昂し、両チームの選手たちが止めに入る中、主審に呼び出された松村はレッドカードを提示された。
まさに論外のプレーだ。名古屋のGKランゲラックが余裕を持ってボールを処理した後に、明らかに遅れて足の裏を見せたタックルをかますなどとは、日本で生まれた子を日本代表に育てたいとまで言ってくれている親日家ランゲラックの心変わりを誘発してしまう、松村優太個人のみならず日本フッボル界にとっても極めて有害な行為だと言わざるを得ない。
仮にランゲラックがこのプレーで日本に愛想を尽かし、どこか海外へ移籍した後にその息子がワールド・オブ・クラスのプレーヤーにでもなったとすれば、日本代表にとってこれほど甚大な損失はない。
諸君らはこの松村の蛮行に対して若さ故の過ちだと軽く考えているだろうが、それは大きな間違いだ。この蛮行の裏にはフッボル界全体に横たわる根強い問題が潜んでいるのだ。
球界に浸透している野村イズム
野球界において新人選手がホームへ突入する時に、球界屈指と言われる捕手に対して足の裏を向けてぶち当たるなんて話しを私は寡聞にして聞いたことがない。あの凶暴で鳴らした虎のレジェンド、マット・マートン氏ですらショルダー・オブ・タックルだった。
ではなぜ野球界ではそのようなことが起きないのかと言えば、人間力が優れているからだ。すなわち球界全体で人間教育を徹底しているからで、故に野球選手は紳士の集団なのである。そこで思い出すのが私の心の師で、先日お亡くなりになられた野村克也氏の挿話だ。
新人のみならずベテランであっても選手に野球とは何たるかを説く際、話の前半部は人としてどうあるべきかなど道徳や倫理面についての内容だったという。そして程度の差はあれこの野村イズムがどの球団にも浸透しているため、野球人のモラルは総じて高く、上級国民に相応しい至高のスポーツとなっている。
だからといって松村個人にレッドでの謹慎中、ノムさんの著書を熟読するよう強制するだけでは問題の根本的な解決とはならない。教育の差とはつまり指導者の差だ。野蛮で低能な集団であるフッボル界の意識改革を目指すならば、まずは監督やコーチといった指導者層が今一度、「選手としてよりも、まずは人間の育成を重んじる」というノムさんの教えを身に叩き込むべきではないかと私は考えるのだ。