メディアは「コミカルなダイブ」と嘲笑
ボンジョールノ、諸君。
ASローマのジェコがUEFAチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦のポルト戦でダイブを行ったと糾弾を受けていたので、早速私もその映像をプロファイリングさせてもらった。
問題のシーンはジェコがポルトのDFペペと競り合った後に起きた。何やら2人が口論を始め、額を突き合わせてから約3秒後、ジェコが額を押さえ倒れ込んだのだ。ぺぺは苦笑いを浮かべ、主審ですら幼児を見るような表情だった。あまりにも時間差のあったリアクションに周囲は呆れ、メディアは「コミカルなダイブ」とまで表現した。
そういった一連の経過を把握し、私はと言うとやれやれという思いだった。その嘆息は何もジェコに対するものではなく、彼の転倒を安易にダイブだと決め込んだフッボルの脳筋連中に向けたものだった。
過去にあった時間差の卒倒
確かにジェコの転倒は普段からフッボルにしか興味のないノータリンにはダイブと映るかもしれない。しかしフッボルという木だけではなく、森羅万象という森をも俯瞰しながらフッボルという現象を捉えているマニア・オブ・ビューラーの私には、ジェコの転倒はペペの頭突きによって引き起こされた危険な脳震盪という結論に行き着いてしまう。
おそらくジェコの転倒がダイブだと誤認される大きな要素は、軽い接触だった上に転倒までに時間差があったことだ。ぺぺと額を突き合わせてから数秒後という転倒のタイミングには演技臭さが滲み出ていることは否定し得ないが、以下の映像を見てもらえればその考えも直ちに引っ込むだろう。
これは1989年10月18日に行われたボクシングのWBA世界バンタム級タイトルマッチで、タイの英雄カオサイ・ギャラクシーの兄で王者のカオコー・ギャラクシーが、挑戦者ルイシト・エスピノサからそう強くない左のダブルを受けてから約15秒後に卒倒し、王座から陥落した映像だ。ジェコを批判している連中はこのカオコーのアクションすらもダイブだと決めつけ、批判するつもりかい? フフフ。
他分野に目を向けてこそサッカーの本質が見出せる
このように脳へのダメージは時折、時間差で顕在化してくることは、ボクシングや格闘技に日頃から目を向けている者であれば自然に身につく教養だ。盲目的にフッボルのみを凝視しているようでは、却ってフッボルの本質を見失うことになる。
木ではなく森を俯瞰する。他の分野を観察してこそ、フッボルもより深く堪能できるというものだ。ということで私は今日も、ベース・オブ・ボールのOP戦7試合で未だ勝利のない阪神の「もやし打線」を観察しようと思う。