日本の漫画ファンの作品に対する何という愛であろうか。敬意であろうか。感謝であろうか。
1年半近く休載が続いている人気漫画「HUNTER×HUNTER」。その登場人物が鍛錬した方法になぞらえ、連載再開するまでただひらすら「感謝の正拳突き」を毎日千回行うという動画を配信している男性がいます。YouTubeチャンネルが話題になったことで、数日前まで10人だった登録者数は3千人を突破。特に語ることもなく、道着がすれる音だけが聞こえてくる20~30分の動画に、たくさんの応援が集まっています。どうして動画配信を始めたのか、男性に取材しました。
(朝日新聞デジタル編集部・野口みな子)
私も愛読させてもらっている『HUNTER・オブ・HUNTER』の連載再開までに登場キャラであるネテロを師と仰ぎ、感謝の正拳突きを毎日千回欠かさずこなしているとは、初回だけが1万回だったという愛嬌も含め、私は深い感銘を受けてしまった。彼の荒行が作者の冨樫義博先生の心に届くと良いのだが…。
それにしてもここまで本来のあるべきファン像をまざまざと見せつけられると、日本のフッボルファンのぬるさが否が応でも引き立ってくる。現在、新型コロナ禍によりJリーグも中断しているが、その再開を望むサポーターらの声が強く聞こえてこないのは一体どういうことか。
無論、日本人がシャイであることは理解しているが、ならばこの正拳突きの男性のように口は開かずとも、YouTubeで黙々と行動によってJリーグの再開を願う動画があってもいいのではないか。それが本当のマニア・オブ・フッボルであろう。そうしたファンによる草の根の運動が見られないことが、フッボル界において日本が世界の中堅国から抜け出せない原因の一つでもある。
仮に現在、日本がフッボル強国であれば、今頃相当数のフッボルファンがYouTubeで1日千回の感謝のカズダンス動画を上げ、今季再びJ1の舞台に戻ってきたカズへのリスペクトに加え、老害集団であるJFAにプレッシャーを掛けていたことだろう。残念ながら今日現在(5月20日)の時点で私が「1日千回 感謝 カズダンス」で検索したところ、それに該当する動画は一つも見つけられなかった。
世界一と言われる日本の漫画業界に対し、未だ世界で中堅国に燻る日本のフッボル界。“音を置き去り”にできるファンの存在の有無が、その2業界の明暗を分けていると感じるのは私だけであろうか…。